金子エンタ!

小説「文房具屋に生まれて」

2015.02.01 Sunday


第26章 朝ごはん、食パン、チーズとマヨネーズ


関西では、鶏肉を「かしわ」と言う。
かしわ屋・・すなわち鶏肉屋だ。
中学校に入学して、、初めての友達はかしわ屋の山田高志だった。

ものすごくありがちな姓と名だが・・ありがちに反抗するようにものすごく個性的なやつだった。

出会い一瞬で。

入学の日、ぼくが自己紹介で「うちは、文房具屋なので趣味は鉛筆削りです」と冗談いってつかんだ後、次の高志が、「うちは、かしわ屋なので趣味はから揚げです。
」とかぶせてきたので、クラスは大爆笑に包まれたのだ。


そんな、ことがきっかけで、ぼく達は親友となり・・クラスの人気コンビとなった。
わが梶田中学は、ぼくの出身校である梶田小学校と梶田南小学校の2校の生徒が進学する公立の中学校で、、
時代は、かの有名な「3年B組金八先生」などの荒廃学園物語が全盛期・・、もちろん我が中学も例外ではなく、むしろ荒廃学校のトップクラスだったのだ・・。
不良グループの3年生はありえないくらい激しくて。
体育館の前でタバコふかしている時はむしろ平和で、、シンナーでへろへろになりながら、突然、ぼく達の教室に入って来て、、いきなりカーテンをライターで燃やしだした・・
それから先生の首根っこをヘッドロックでつかんで黒板消しで頭をはたくのだ。

その後・・・・・
「燃えろよ♪♪燃えろよ♪♪炎を燃えろ♪♪・・火の粉を散らして♪♪学校焦がせ♪♪」とキャンプファイヤーでおなじみのうたを歌って、、教室をさって行った・・。

ぼく達1年生は震え上がった・・緊張感が張りつめた、、ここはまさに生死をかけた戦場だった・・。
入学から1ヶ月くらいたった、ある日・・もうだめだと思う土曜日がやって来た。
土曜日の最後の授業、3時間目の理科が終わった時・・入学早々、3年の番長グループの手下になった1年7組の山口克己が教室にやって来て、、ぼくと高志に
「3年の先輩がお前らのこと呼んでるから・・音楽室にすぐ来い!!」といった。
ぼく達は足が震えて・・
「高志・・もうあかん」とぼくがいって、、高志はだまり込んだ。

恒例の「1年狩り」が始まったのだ・・。
「1年狩り」とは3年の番長グループが、学校の支配力をより高めるため、、その年、入学した1年の中でもっとも目立っている15人程度を集めて、焼きを入れるイベントだった。
「1年狩り」から逃げると本当に殺されかねないという噂があったので、、
ぼくと高志は足を震わせながら、音楽室に入った、、15人の選抜1年生達は、、ショパンとかモーツワルトの肖像画が掛けらている壁際に横一列に並ばされた。
いきなり、太ももに蹴りが飛んできて・・ぼくは床に倒れ込んだ・・「こら!!立て、ボケ・・」小太りでそり込み入れた3年が言って・・ぼくはしびれる足を押さえながら立ち上がった・・。
となりでは高志が、竹刀でお尻を何発も殴れれていた・・。
何時間にも感じられる・・ 実際は30分くらいだったのだと思う。
番長が「よっしゃ!!終わりや」と号令を掛けて・・
番長グループが一人ずつ音楽室から出ていった。
選抜1年生全員、、床に倒れ込んでいて・・
最後の3年生が音楽室を出て、扉がバッシャンと閉められた瞬間・・ぼく達に安堵の空気がながれ・・その瞬間、心がすきっと透き通った思いだった。
何発か殴られ蹴られた体は痛かったのだけれども・・おおげさかもしれない、、戦場から生還したという感じ。

一緒に耐えたという友情・・なんか気持ちいいのだ、、。
選抜1年生15人、、よくわからない友情と団結が生まれた。

となりの高志が「痛・た・た・た〜」という顔をして、ぼくも「痛・た・た・た〜」と顔で返した。

家に帰ると、おかんが「あんたその顔・・どないしたん??」いつになく慌てた顔で言っておばーちゃんが慌てて凍り枕を冷凍室から出してきた。
ぼくは「けんかしてもうた。

」と嘘をついた・・。
その日の夕飯・・おとんが「けんかええのぅ!!アキ・・男前や!!」と言った。
夕飯が終わった9時頃・・高志からの電話が鳴った。

「今日、うちに泊まりにけえへんか?」「おう、、今から行くわ!!」「おかちゃん、、中学の友達の家、泊まってくるわ!!」「あほ!!こんな時間から行ったら迷惑や、やめとき」とおかんが言った。
「行かせたれ・・」とおとんが言った。

おばーちゃんが、パンツと、歯ブラシとタオルと醤油味のせんべいの袋をリックに詰めて持たせてくれた。
高志の家につくと高志のおっちゃんが、「いらっしゃい」と言った。
ぼく達は交代でお風呂に入った。
殴られて腫れたほっぺたがずきずきして・・。
ぼく達は布団にはいった後、今日の「1年狩り」の話をした。
あのキックは効いたとか、あのパンチは痛かったとか・・。
朝、、高志のおばちゃんが「起きや!!ご飯やで・・」と起こしにきた。
ぼくは高志のうちの朝ごはんに驚いた。
ぼくのうちでは、食パンはバターと目玉焼きだった・・。
おばちゃんが、食パンにスライスチーズをのせて、オーブンで焼いて皆に手渡す。
受け取ったみんなは、そのトーストの上にマヨネーズをたっぷりかけて、、ほおばるのだ。

おっちゃん、高志の妹の康子、、の後・・おばちゃんはぼくにチーズがのったトーストを手渡した。
見よう見まねで、マヨネーズをたっぷりかけて・・昨日よりさらに、少し腫れが増したほぺったを押さえながら、一気にほおばった。
「むっちゃ・・おいしい・・」となりで高志も、ほっぺたを押さえながら、チーズとマヨネーズの食パンをほおばっていた・・。
「おいしい・・やろ??」と高志が聞いて・・ぼくは、うなずいた・・・いろんな家庭の朝ごはん・・もちろん全部おいしいだろう。

けれど・・食パン、チーズとマヨネーズ・・この朝ごはんは忘れない。


目次
Copyright(c) 2005 KanecoEnta!! All Rights Reserved.