全章の一覧

    プロローグ    第1章 おばーちゃんの店    第2章 おとんの決断    第3章 通天閣
    第4章 オートマチック TOYOTA かむり    第5章 ブルーメタリックの万年筆    第6章 小さな文具屋のイノベーション
    第7章 一家に一台「マイ ティーチャー」    第8章 1ダースの消しゴム    第9章 「昭和の第4コーナー」
    第10章 くすり屋に生まれて    第11章 おかんとぼくの暗黙同盟    第12章 幸運の白いヘビ
    第13章 パンチパーマとおんなごころ    第14章 誕生日には筆ばこを・・    第15章 「ままならず」の呪文
    第16章 ファーストラブ(初恋)    第17章 世界で一番暑い秋    第18章 かすれ声のアカペラ・・(素歌)
    第19章 真珠とおしるこ(前編)    第20章 真珠とおしるこ(後編)    第21章 tough pulling(引きの強さ)
    第22章 文房具屋の匂い・・    第23章 さくら色の嘘    第24章 男子、たまに泣いてもいいんよね
    第25章 走ればええねん。ただ速く!!    第26章 朝ごはん、食パン、チーズとマヨネーズ    第27章 文房具屋に生まれて
    第28章 夜道に紺色の浴衣    第29章 違う理由    第30章 祭りの後に・・(前編)    第31章 祭りの後に・・(後編)

記事一覧

プロローグ

ぼくは大阪の小さな町の小さな文房具屋に生まれた。
そして気が付けば文具メーカーに就職し、今は文具通販の会社で働いている。
今、振り返ればそんなにに意識はしていなかったが
(まあ、多少・・成り行き的なところもあったと思うが・・)

文房具用品に囲まれ30数年間を過ごしたことに自分自身少し驚いている。

8歳でコピーペーパーのサイズが全て言えたし。

10歳になる頃には、シャチハタネーム印の回転ディスプレイを3回まわした後、ぼくの名前のネーム印は5秒で見つけることが出来た。

11歳で近所に配達に行けるようになり。
12歳で領収書の書き方を覚えた。

 大阪という町は、よくいわれるように商いの町だ。
そんな町で他聞に漏れず、商売魂旺盛な”おかん”と”おばーちゃん”と”おとん”の教育を受け育った。

 ”おかん”がいうには、ぼくの初めて覚えた言葉は「じゅえん(十円)」で、
物心が付く前の遊びといえば、店の出口に設置されたレジスターの横に座り、
清算のボタンを何度も押しレジを「ちぃーん」と開け閉めしていた事らしい。

小さい頃、どうしても欲しいおもちゃがあった。
そこで”おかん”に頼み込んで臨時のお小遣いをもらった。

 喜び勇み近所のおもちゃ屋に向かった。
目当てのプラモデルを手に入れ家に帰ったその時だ。

 店の入り口で電卓をたたく”おかん”がいきなり、
プラモデルを見せろといった。

そしてこれをなんぼ(いくら)で買ってきたかと聞いた。

ぼくはとっさに嘘をついた。
「180円でこうた」定価は200円のおもちゃだった。

なぜなら、我が家、わが町では、物を定価で買うことはなにより
ご法度という不文律があったからだ。

次におかんはおつりを見せろいう。ここでジエンドだ。

おかんはぼくの首根っこ掴み、近状のおもちゃ屋に一目散に走りだした。

そして店に着くと店主を呼び出し一言

「あんた、子供やおもて定価で物売ったらあかんやろ!」

 店主はぼくに無言のまま20円を差し出した。

ぼくは20円を黙って受け取った。

帰り道は怖かったという思いと、悔しいという思いが交互にやってきて、ずっと泣いていた。

その日のおかんの言葉は30年以上経った今もなお、ぼくの心から離れない。